『ほろ酔い植物考』     ハリエンジュ(ニセアカシア)   マメ科

                                     田城 松幸
      
   北米原産の帰化植物、高さ20mにもなり樹皮には縦に裂け目がある。枝にはとげがあり5
  月頃白い総状花序(フジの花のような)を出し、花には芳香があり、天ぷらにすると美味しい。
   明治の頃日本に入ってきたようで、マメ科だから痩せ地に強く斜面の崩壊止めなどに植林さ
  れることが多く、今ではほぼ全国に半野性化している。
   また街路樹としても人気があり、特に北海道には多いようである。が、この木は根から盛ん
  に芽を出す、それを引抜こうとしても簡単に抜けないし、刺はあるし、庭木には向かない。
   この木を通称アカシアというがこれはあきらかに間違いで、牧野植物図鑑には「世間ニテハ俗
  ニあかしあト通称スレドモ是固ヨリ真性ノAkasiaニ非ザレバ混ズベカラズ」とあり、アカシア
  で索引を見ても載っていない。では何故アカシアと通称するようになったのか、それは学名の
  Robinia、Puseudo、akasiaからきている。属名のロビニアはこの木を初めて北米からヨーロ
  ッパに導入した植物学者ロビンにちなんだもの。種名のプセウド(プシュウド)が「偽物の」とい
  う意味でこれをそのまま和名に直訳したのがことの始まり。アカシアという木は熱帯サバンナ
  に自生する木で、日本ではまず育たないという。無論北海道では育たない。
   時々テレビでキリンが刺のある木の葉をじゅうが悪そうにして食べているのを見るが、あれ
  が多分マジメなアカシアであろう。
   偽者というと本物より劣るというイメージがあるためいつの間にかアカシアと言うようにな
  ったのだろうが、この木はこれで立派な堅気の木である。
   やはり名前は心して付けなけないと後の世の人が迷惑する。
   本物のアカシアと生育地が競合しないのだからアカシアでいいのでは、と言う向きもあろう
  が断じてそんな問題ではない。カヌーイスト、野田知祐氏の言をもってすれば第一紛らわしい、
  第二に、やはり紛らわしいと言うことになる。ニセアカシアではこの木が嫌がるだろうからハ
  リエンジュと呼ぶのが一番良いだろう。
   かって北岳に登った時、夜叉神峠の崩壊地にこの木をいっぱい植林していた。タクシーの運
  転手が誇らしげにあれはアカシアですと言っていたが、そこで「いや、これは本当はニセアカシ
  アです」などとノタマウ必要はない。アカシアの花の下で可憐な乙女がそっと涙を拭くからレコ
  ードが売れるのであって、これがニセアカシアの花の下では若干色気に欠ける。
   北米では別名パイオニア、ツリーとも呼び、かって西部の開拓時代、新しい町を作れば必ず
  この木を植えたと言う。痩せ地に強いし世話もかからないし、燃料にもなるということであろ
  うか。それにしては西部劇でこの木を見た記憶はないが。
   アカシアといえば私は北原白秋の「この道はいつか来た道、ああそうだよう アカシアの花が
  咲いてる」の『この道』を思い出す。実際北海道には多く植えられていると言う。やはりパイオ
  ニア、ツリーの名残であろうか。

      浮雲も 花アカシアもまぶしき日    近藤喜久子