『ほろ酔い植物考』      トサミズキ      マンサク科

                                     田城 松幸
      
   不思議な木である。この広い地球上で高知県の蛇紋岩地帯だけにしか自生しない。高さはせいぜい4
  m、3月頃葉に先だって黄色い花が垂れ下がって咲く。この木の仲間は日本からヒマラヤにかけて20数
  種が知られておりわが国には他にコウヤミズキ、キリシマミズキ、ヒュウウガミズキが自生する。  
   それぞれ花や葉に特徴があるがヒュウガミズキは別名イヨミズキともいい最近量販店などでみかける
  ようになった。トサとヒュウガの区別点は花の数でトサが7〜8個に対しヒュウガは2〜3個と少ない。
   挿し木で増やせるせいか江戸時代の頃から園芸用として盛んに庭などに植えられたようで、今でも個
  人の庭や公園などでよく見かける。なお、なんでミズキという名がついたのかしらないが、ミズキ科の
  ミズキとはなんの関係もない。 
   珍しい木で、全国版、高知県版共に絶滅危惧種に指定されており、高知市、南国市、鏡村、土佐山村、
  日高村に自生が知られているが、蛇紋岩が鉱物資源として採掘されるため個体数の減少が著しいという。
   最近幡多郡三原村で1株見つけた。県道の法面、コンクリートブロックの割れ目に生えている。わざわ
  ざ人が植えるような場所ではない、種は風では運ばれないし鳥が実を食べる訳でもない、いったいどうし
  てそんな場所に生えたのか、私には理解できない。
   蛇紋岩地だけにしか自生しない木がなぜ公園や庭でよく成長するのか。トサミズキは昔はあちこちに
  いっぱいあったのかもしれない。が、肥沃な条件の良い地は他の背の高い木に占領され日陰になる。好日
  性の木は日当たりの悪い地では生育できない、蛇紋岩は乾燥も激しく肥料分も少ないのでカタギの木は
  生育できない、たまたまトサミズキはカタギの木ではないのでかろうじて悪条件の地に生き残ったので
  あろう。決して蛇紋岩が好きなわけではない。
   余談になるが山と渓谷社発行の「レッドデータプランツ」には生育地を高知県の蛇紋岩地にのみ生育と
  限定しているが、山渓ハンディ図鑑「樹に咲く花」では生育地が高知県の蛇紋岩地や石灰岩地となってい
  る。同じ出版社だがどちらかが(あるいは両方が)間違っている。
   同じ蛇紋岩地帯の希少種にトサオトギリという草が有る。こちらのほうは別の場所に植えかえると数
  年で枯れてなくなるという。トサオトギリは蛇紋岩がないと生きられない種のようである。高知県では高
    知市、南国市、山田町の蛇紋岩地帯にのみに記録があるようだが、採掘やゴルフ場建設などのため激減
    したという、もう絶滅したかもしれない。

      隣との 行来の路も土佐水木  藤原敏喜