『ほろ酔い植物考』      カラタチ    ミカン科

                                     田城 松幸
      
   中国、揚子江付近の原産で昔朝鮮を経て日本に渡来したようで、17世紀には接木の台木と
  して用いられた記録があるという。高さはせいぜい3m、ただし青森県には6mの大木が多数あ
  るという。ミカンの類では珍しく冬に落葉するが4〜5月頃葉の出る前に白い花を付け、花に
  は芳香がある。若い枝は緑色で2〜6cmのどぎつい棘が互生し、うかつに木立に手を突っ込む
  と痛い目に合う。
   北原白秋の詩があまりにも有名なので名前は知っているがまだ見たことが無いという人がほ
  とんどであろう。余談になるが詩の一節「からたちのそばで泣いたよ、みんなみんな優しかった
  よ」について詩人の佐藤八郎が普通は「泣いたよ」とくれば「悲しかった」というような言葉を連
  想するが白秋先生は「優しかったよ」と言う、このへんが白秋先生の偉大なところ、というのを
  何かで読んだ記憶がある。そう言われてみればそんな気がしないでもない。やはり天才の考え
  ることはそのへんの酒飲みの考えることとは一味も二味も違うようである。
   またカラタチには枳穀(きこく)という別名があり、パソコンでも「からたち」で枳殻の文字が
  出る。が、これは厳密にはカラタチでなく、「おにもどり」という中国の薬用植物のことだという。
   私が子供の頃生傷が絶えたことがなく、清潔という言葉とはおよそ縁遠い生活だったので度
  々傷が化膿した。そんなとき近くの生垣からカラタチの棘を取ってきてそれで化膿した箇所を
  突き刺し、膿を出したことを思い出す。今の子はこんなアホゲなことはしないであろう。
   カラタチに限らずミカン科の木にはナミアゲハ、ナガサキアゲハ、クロアゲハなどの蝶が産
  卵する。背戸に植えているサンショウにも度々大きな幼虫がついている、これは多分クロアゲ
  ハであろう。ナミアゲハは不思議なことにレモンの木に産卵しょうとはするのだが一度も幼虫
  を見たことが無い。タチバナには度々幼虫が付いているが。レモンはもとから日本にあった木
  ではないから昔から日本にあったミカンの類とは匂いが違うのであろう。ナガサキアゲハはも
  ともと南方系の蝶だから日本産のミカンにこだわらないのかもしれない、大きな幼虫がいっぱ
  いレモンの木の葉を食べている。
   カラタチの名の由来は唐橘(からたちばな)で文字道理中国から渡来したことを意味する。利
  用価値はというとまず接木の台木、近くのブンタン農家もすべてカラタチを使っているという。       
   その他にはというと歌にも歌われているように畑の垣根くらいであろう。実は少し苦味のあ
  る強い酸味で、生酢として利用できるようなものではない。
   カラタチの学名はPoncirus trifoliataで、三出複葉を持つミカン科の植物と言うような意味
  になる。ナツミカンはC.natudaidai、イヨカンはC.iyo、ハッサクはC.hassaku、ウンシュウミ
  カンはC.unshiu、ユズはC.junosである。学名も調べてみるとおもしろい。  
   
       雲を見て からたちの花を見て歩く  鐘一路