『ほろ酔い植物考』      ツワブキ          キク科

                                     田城 松幸
      

   本、四,九州の海岸の岩場,崖、林縁などにごく普通に見られる多年草。フキに似るが葉
  に光沢があるので艶葉蕗、また厚葉蕗がなまったとも言われている。漢字では石蕗と書く。
   春先の新芽には灰褐色の毛があるが成長とともになくなり光沢が出る。フキ同様に食用に
  するが、食べるのは茎だと思っている人もおられよう。厳密には茎ではなく葉柄である。
   好日性の草だが日陰でも良く成長するため、公園や庭にも植えられ、斑入りなどの園芸品
  種も多い。また葉には一筆書きのような白っぽい線が入っているのも珍しくない。ハモグリ
  バエの幼虫のようで、よく見れば線の両端では広さが異なる。幼虫の成長にともなって大き
  くなっているはずだから、暇な人は線の一番大きな辺をほじくってみて戴きたい。そこに幼
  虫がいるはずである。
   晩秋の頃、高さ50cmくらいの花茎を出し、黄色い頭状花をまばらにつけるが、花があま
  り無い時期だけに良く目につく。足摺岬の断崖やスカイラインなどはノジギクの白とツワブ
  キの黄色とが対照的で特に美しい。
   ツワブキの葉柄には時として途中が膨れているものがある。これはマムシが噛んで牙を折
  った痕である、マムシの卵は腹の中で孵化し口から出てくる、そのさい牙が邪魔になるので
  ツワブキの葉柄を噛んで折るのだ。と、アホゲな話をまことしやかにノタマう人がいる。
   驚いたことにそれが事実だと信じているオオアホゲがまれにいる。
   マムシはツワブキと違い湿った谷筋に多い。黒尊の標高 1000m の稜線でも度々マムシに
  出会う。当然そんな高い場所にはツワブキは自生しない。これはどうしてくれるのか。
   植物はいざ知らず大部分の動物は生殖器官と排泄器官が同居しているのが普通である。こ
  のこと自体になんら不都合はない、全ての生き物は神が作り給うたのだから。
   マムシが蛙を捕食するのも、地球上で戦争が絶えないのも、ブッシュや小泉がアホなのも
  全て神の御心のなせるワザなのだ。そのことについて文句のある人は直接神様に言っていた
  だきたい。どちらにお住まいなのかは存じ上げないが。かくも慈悲深い神が決して許さない
  のは「自殺行為」だと言う。せっかく与えた生命を自ら破棄するのは神への冒涜である。だか
  ら自殺者は決して天国の門をくぐることはないというが、詳しいことは知らない。
   マムシは卵胎生(哺乳類以外の動物において、胎生であるが、母体内で発生する卵に栄養分
  としての卵黄が貯えられていて、母体に栄養を依存しないもの。または胎盤以外の方法で母
  体から栄養を受けるもの。マムシ、タニシなど。広辞苑)である。
   したがって体内で孵化した成虫(と言うのかしら)は排泄器官以外に出口は無い。
   それを口から出す、そのために牙を折るというのは着想が奇抜で話としては面白い。が、
  マムシの毒牙はマムシにとって唯一最大の武器である。それを自ら放棄する、神の教えに反
  する、いかに慈悲深い神といえどもお許しになる道理が無い。
   では現実にあるあの葉柄のふくらみは何であろうか。ウィルスだろうか、それともアブラ
  ムシの類が寄生しているのであろうか。いずれにしろそんなことは私の知ったことではない。

     さびしさの 眼の行方や石蕗の花  蕪村